TNFDに基づく生物多様性への影響分析
①目的
世界的に自然環境や生物多様性への対応要請は年々高まっています。
TOKAIグループでも、事業活動における自然環境や生物多様性との関わりを認識し、その保全と持続可能な利用に向けて検討を進めていくこととしました。
当社グループは暮らしや社会に関わる様々な事業を通じて、気候変動対策に加え自然環境や生物多様性との調和も重視し、次世代の子供たちが安心して暮らせる社会の実現を目指します。
②TNFD※1分析-LEAPアプローチ
当社グループの様々な事業活動における自然資本との関わりを把握し、評価を行うため、TNFDが推奨するLEAP※2アプローチに則った分析を開始しました。
今回のLEAPアプローチの分析範囲は、エネルギー、情報通信、CATV、建築設備不動産、アクアの5事業を優先的に選定しました。
また、今回はLEAPアプローチのうち、Locate(自然との接点の発見)、Evaluate(自然への依存と影響の評価)を試行的に実施しました。

- ※1「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の略で、自社グループの事業が自然資本に与える依存とインパクトを測定し開示するフレームワーク
- ※2LEAP:企業活動と自然との接点や自然との依存・影響関係、リスクおよび機会等、自然関連課題を評価する手法。TNFDにより開発された。LEAPは「リープ」と読む
分析① 自然への潜在的な依存と影響
当社グループは、TNFDで推奨されているENCOREツール※1を用いて自然資本への依存・影響を分析しました。ヒートマップを確認した結果、特にエネルギー・建築設備不動産・アクア事業で自然への依存・影響が高く、GHG排出や水質汚染などのリスクがあることを認識しました。

次に、バリューチェーン分析※3を実施し、上記ヒートマップを当社グループ事業のバリューチェーン上に位置づけました。さらに依存・影響のパスウェイ分析※4を実施し、当社グループ事業の自然に対する依存と影響の相互の関連性を理解するとともに、将来的な事業へのリスクを特定するためのベースとなる情報を整理しました。
- ※1ENCORE:Exploring Natural Capital Opportunities, Risk and Exposureの略。UNEP FI(国連環境計画金融イニシアチブ)などが開発した、企業活動の自然資本への依存度や影響度、そこから生じる金融リスクを分析・可視化するオンラインツール)
- ※2ヒートマップでは一部の事業において、特に高い傾向のある依存項目として文化サービスが認識されましたが、関連性が低いことを確認したため、同項目を除外しています。
- ※3バリューチェーン分析:グループのバリューチェーンにおける上流・下流の関係性を整理した分析
- ※4依存・影響のパスウェイ(経路)分析:事業活動と自然との関連性を、要因から結果までをフローとして整理した分析
分析の結果、エネルギー、建築設備不動産、アクアの3つの事業領域で、自然への依存、影響が高い傾向にあることを認識しました。
- ●エネルギー事業
【影響】
都市ガス事業の製造プロセス(焼津市製造施設)において、メタンガス排出による温室効果ガス増加の影響や、陸域・水域への影響の可能性があると評価されました。
- ●建設設備不動産事業
<メガソーラー> 【依存】
メガソーラーの発電量は、天候などの気候条件に依存し、また気温上昇や異常気象の影響も受ける可能性があると評価されました。
- <土木工事>
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【依存】
天候などの気候条件や、生態系がもたらす土壌や堆積物保持機能による、地滑りなどの災害防止機能に依存していると評価されました。【影響】
掘削や運搬時の騒音・光・臭気が生物に影響を及ぼすとともに、地形及び水利用への変化をもたらすことで生息地の劣化を招く可能性があると評価されました。
- ●アクア事業
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【依存】
製造プロセスにおいて、生産や洗浄に必要な水量・水質を確保するため、生態系が提供する水供給・水質浄化機能に依存していると評価されました。【影響】
製造プロセスにおいて、廃水は近隣の土壌や水域の栄養塩汚染を含む環境汚染を引き起こす可能性があると評価されました。
分析② 要注意地域との接点
当社グループの事業拠点と、周辺の自然環境との関係性を把握することを目的として、TNFDにおける評価観点として推奨されている「生物多様性の重要性」、「生態系の十全性」、「物理的水リスク」の観点で、生態学的に影響を受けやすい「要注意地域」との接点に関する分析を実施しました。

出典:Global Forest Watch

緑が濃いほど、十全性が高いことを示す。
出典:GLOBIO

出典:AQUEDUCT

出典:国土交通省
- ※以下データを用いて分析
生物多様性の重要性:保護地域、生物多様性重要地域(出典:共にGlobal Forest Watch(GFW))
生態系の十全性:Mean Species Abundance(MSA)(出典:GLOBIO)、Ecoregion Integrity Index(ErII)(出典:Beyer et al.)
物理的水リスク:水ストレス(出典:Aqueduct)、水質総合指数(出典:Water Risk Filter(WWF))、洪水浸水深(洪水リスク)(出典:国土交通省)
分析の結果、当社グループの一部の事業拠点が、事業による影響を受けやすい自然環境を有する地域に位置していることが確認されました。
- ●生物多様性の重要性の高い地域
法令により指定された保護地域や、国際的に生物多様性上重要と認識されている地域に近接する場合、事業活動により、こうした地域に生息する貴重な生物種やその生息環境に影響を及ぼす可能性があります。
- ●生態系の十全性の高い地域
生態系の十全性が高い、もしくは生態系の十全性が急速に低下している地域においては、事業活動により、地域に残る元来の自然環境や生態系に影響を及ぼす可能性があります。
- ●物理的水リスクの高い地域
事業の水利用により地域の水資源に影響を与える可能性がある他、水資源の枯渇、洪水により事業活動が影響を受ける可能性があります。また事業活動により地域の水質に影響を及ぼす可能性があります。
③現状の取り組みと今後の展開

今回の分析で特定した「分析①自然への潜在的な依存と影響」について焼津市内に供給する温泉井戸から湧出するメタンガスを大気放散せず回収し、都市ガスの原料として活用することで地球温暖化の防止を図っています。
土木工事業では、自然環境保全のため品質・環境・安全に十分配慮した方針・目標を定め、従業員と協力事業者が一体となって取り組んでいます。
自然に依存しているアクア事業では、水量の維持のために、行政が定める採水量の基準を遵守するとともに、洗浄水は適切な濃度に中和して排水しており、自然環境への影響の低減を図っています。

「分析②要注意地域との接点」の結果で示された自然保護区域などでは、生態系への影響に配慮しながら事業を行っています。また、それ以外の地域でも、焼津市内の海岸防災林や富士山などでの清掃活動、森林カーボンクレジットへの取り組みなどを通じて、自然環境保全に貢献しています。
当社グループでは、今回の分析結果を踏まえ、今後も更なる分析や対策の強化を進めてまいります。また、現在、地域と一体となって参加している環境保全活動にも継続して取り組み、生物多様性の保全および自然への影響の軽減を推進してまいります。